一時期ニュースになった「給与ファクタリング」。違法といわれているのですが、実際どうなのでしょうか。
報道されると不安になりますね。
ここでは、給与債権を買い取るとされる給与ファクタリングは違法なのかどうなのかについて説明します。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、利用者(企業あるいは個人事業主)が保有する売掛金をファクタリング会社に売却することにより資金調達する仕組みをいいます。
ファクタリング会社は売掛先の信用リスクを鑑み手数料を算出して差し引いて利用者へ資金を交付します。つまり、給与ファクタリングの流れは以下の通りです。
- 利用者がファクタリング会社に売掛金を売却
- ファクタリング会社が手数料を差し引いて利用者に資金交付
- 売掛先より売掛金を回収
- 利用者はファクタリング会社へ売掛金を入金
となります。
ファクタリングは、法律的には売掛債権の「売買」に該当し、「貸付」ではありません。
つまり、ファクタリングは合法であります。
給与ファクタリングとは?
給与ファクタリングとは、先述のファクタリングのしくみの応用で、個人が勤務先に対して保有する給与(賃金債権)を給与ファクタリング会社へ売却して資金を調達するしくみです。給与ファクタリング会社は一定の手数料を請求し、買い取って資金交付して後日個人より回収することになります。
つまり、給与ファクタリングの流れは、以下の通りです。
- 個人が給与ファクタリング会社に給与債権を売却
- 給与ファクタリング会社が手数料を請求し個人に資金交付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ給与を入金
売掛債権の売買によるファクタリングの流れと同じですが、実はこれは違法であるとの判決が示されています。一体何が違法なのでしょうか?
給与ファクタリングへの判例
給与ファクタリングは一般のファクタリングの派生形としてみることができますが、裁判所の判例により違法と判断されました。
令和2年3月24日の判決→違法判決
2020年(令和2年)3月24日、東京地裁で給与ファクタリングについての判決があり、給与ファクタリングは違法という内容でした。
どうして違法という判断になったのでしょうか?それは、「給与債権」の法的性格を裁判所はあげています。
給与債権についての法的性格として、以下の4つの原則があります。
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上の定期払いの原則
この中で裁判所は特に、直接払いの原則を重要視しました。
直接払いの原則とは、労働者本人に対してのみ給与は支払えないという原則です。
裁判所の見解は?
たとえ労働者(ファクタリング利用者)が、給与ファクタリングによりファクタリング会社へ給与債権が譲渡したとしても、会社は給与を労働者本人にしか支払えません。給与ファクタリングの流を再掲します。
- 個人が給与ファクタリング会社に給与債権を売却
- 給与ファクタリング会社が手数料を請求し個人に資金交付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ給与を入金
一方、裁判所の見解は以下の通りです。
- 個人が給与ファクタリング会社に給与債権を担保として金銭消費貸借契約を交わす
- 給与ファクタリング会社が手数料を請求し個人に資金を貸付
- 勤務先が個人へ給与を支払う
- 個人がファクタリング会社へ給与をもって貸付金を返済
つまり、給与債権は直接払いの原則に基づき、譲渡は不可との見解を裁判所は示したことになります。つまり、ファクタリング会社は給与債権を担保として資金を貸付するという認識に裁判所はたっています。
ファクタリング業務は債権の買取であるため財務局や都道府県へ登録は必要でありませんが、貸付であれば登録が必要です。すなわち、給与ファクタリングは貸付行為ということであり、貸金業登録のない給与ファクタリングは違法ということになります。
参考:川上・吉江法律事務所「給与ファクタリングが貸付であると判断した裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)」
金融庁、消費者庁も注意喚起
(引用先:金融庁)
全国で給与ファクタリング被害が拡大していることに対し、金融庁、消費者庁は注意を呼びかけています。
(金融庁:ファクタリングに関する注意喚起)
消費者庁:違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください!
まとめ―給与ファクタリングは違法、手出し厳禁!
給与ファクタリングは一般のファクタリングと似てはいるものの、裁判所は給与債権の法的性格に基づき給与ファクタリングは違法と判断しました。しかしながら、給与ファクタリングを語って違法な貸付行為は後を絶ちません。
違法なファクタリングであることであることに十分注意してください。