銀行の融資って、皆同じじゃないの?
とお考えの経営者の方もおられるかもしれません。
確かに、資金を調達できれば皆同じとお思いになるのも納得できます。
ここでは、銀行など市中金融機関が取り扱っているプロパー融資について解説します。
プロパー融資とはどんなものなのか、また、プロパー融資のメリット・デメリットについて20年あまり金融機関で融資を担当していた私みやけんが説明いたします。
よろしくお願いします♪
プロパー融資とは?
プロパー融資とは、銀行など市中金融機関がそれぞれの視点で審査し融資するシステムであり、融資に保証をつけないため、債務者がさまざまな事由で債務不履行となった場合は損失が発生することになるため厳しく審査されます。
同時に銀行など市中金融機関は
- 融資の5原則
- 自己査定
の2つの観点から審査します
融資の5原則
銀行など市中金融機関は、融資を実行できるのかどうかを
- 公共性の原則
- 流動性の原則
- 安全性の原則
- 収益性の原則
- 成長性の原則
に適合するかを判断します。
これら5つの原則を融資の5原則といいます。
公共性の原則
銀行など市中金融機関は重要な役割として、資金を円滑に供給する役割があります。自社の利益を最優先にするのでなく、公共的な役割を果たすよう融資に携わる必要が求められています。また、反社会勢力に資金流入されていないか注視する必要もあります。
流動性の原則
できるだけ多くの業種に資金ニーズに対応するためには、銀行など市中金融機関は可能な限りたくさんの業種に供給することが望まれています。
しかしながら、融資の原資は預金であるため、払い戻しに対応するためには長期運用(貸出)ばかりでしていては手元の資金のが枯渇する恐れもあるため、また、信用リスク軽減の観点においても短期での資金運用を図る必要があるといえます。これが流動性の原則であります。
安全性の原則
当然のことながら、融資資金が確実に回収される必要があるため、資金使途や返済原資、企業の返済能力や安全性に問題がないかについて十分に確認しなければなりません。
収益性の原則
銀行など市中金融機関は、公共性が高いとはいうものの、営利企業であるので、収益をあげる必要があります。
融資量の拡大や貸出金利を高くするなどして収益の増加を図ります。融資先企業の信用力や担保、保証などを勘案して金利を決定し、収益の確保に努めなければなりません。
成長性の原則
融資により企業が発展・成長すると共に、銀行など市中金融機関も同様に成長しなければなりません。
共存共栄ですね。
自己査定
自己査定とは、銀行など市中金融機関が信用リスクをチェックするための手段で、また適正な償却・引当を行う準備作業であります。
年に2度(12月末、3月末)実施され、金融機関の資産である貸出金の内容、すなわち貸出先の返済状況、及び決算状況を鑑み5つのカテゴリー(正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先)に区分し、区分内容に応じて債務者の貸出金をⅠ(非)分類~Ⅳ分類に分類して各金融機関の不良債権割合を監督官庁に報告します。
12月末時点の自己査定がメインでした。
3月末は著変事項のチェックが主でした。
例えば、毎月約定通り返済している企業でも、決算状況が思わしくないと正常先と区分されないケースもあり、運転資金のニーズがあり、企業が追加融資の申込を行ったとしても、銀行など市中金融機関はその企業の自己査定区分によっては応じない場合もあります。
ちゃんと返済しててもあかんのかぁ・・・
特に銀行など金融機関は、「赤字」「債務超過」において厳しい査定を行うので、企業は事業運営において「赤字」「債務超過」には注意して運営する必要があります。
プロパー融資のメリット・デメリット
銀行など市中金融機関がプロパー融資を取組にあたっての基本的な観点について説明しました。
それでは、銀行など市中金融機関が行うプロパー融資のメリットやデメリットとはどういったものでしょうか。
プロパー融資のメリット
プロパー融資を受けるに際してのメリットは主に、
- 融資額の上限がない
- 信用力が上がる
があります。
融資額の上限がない
企業の業績や、成長性等を銀行など市中金融機関が審査して融資が可能か否かを判断するので、いくらでも融資することができます。
信用力が上がる
企業がプロパー融資を受ける
イコール
銀行など市中金融機関に成長性や収益性を認められた
ことを意味しているので、企業はプロパー融資による資金調達で、事業の拡大を図るうえで有利に働くものと考えられます。
プロパー融資のデメリット
一方、プロパー融資のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
- 審査が厳しい
- 保証人や担保を求められる(場合がある)
があります。
審査が厳しい
銀行など市中金融機関は先述の「融資5原則」「自己査定基準」に照らし合わせて審査するのでハードルは必然的に高くなります。ただ、金融機関の審査基準はそれぞれ異なるので審査に通る場合もあればクリアできないケースもあります。
保証人や担保を求められる(場合がある)
銀行など市中金融機関は融資した資金が回収できるか否かを審査するので、万一回収不能になると100%損失となるため、回収できないケースを想定して企業に対し保証人、または担保を求めることがあります。
・保証人
金融機関は企業の経営者を連帯保証人としてつけることがほとんどですが、一定の経営状況であれば「経営者保証に関するガイドライン」に基づいて、経営者の保証がなくても融資は可能となります。
また、保証人保護の観点から、事業に携わっていない第三者を保証人とする場合には、「保証意思宣明公正証書」を公証役場にて作成する必要があります。
軽い気持ちで保証人になることに歯止めがかかりそうですね。
・担保
主に不動産や自行預金を担保として徴求するケースがあります。不動産、特に土地については相続税算出するために国税庁が発表している路線価表をもとに計算されるため、時価の半分くらいの評価であることが大半です。
よく文句言われました。
「なんぼで評価してんねん」と(汗)
まとめ
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
プロパー融資において、銀行など市中金融機関がどのようなスタンスで審査をしているのか、そしてプロパー融資のメリット、デメリットについて説明してきました。
厳しい面もあるかもしれませんが、企業が事業活動に真摯に向きあえばプロパー融資を受けて事業の拡大を図ることは十分可能であります。
この記事がその一助になれば幸いです。