【医療・介護事業者必見!】診療報酬ファクタリングのしくみと特長、注意点とは?

診療報酬は病院など医療機関が保険組合に診察や検査その他利用者に対して行ったサービスに対して請求して得る報酬です。しかしながら、診療報酬が入金されるまで3ヶ月近くかかってしまいます。

帝国データバンクによると、2021年の医療機関の倒産は33件、負債総額は94億3000万円という調査結果が出ています。特に診療所の倒産前年比1.8倍に増加しています。

本記事では、診療報酬ファクタリングについて解説します。
診療報酬ファクタリングは3ヶ月近く先に入金される診療報酬を医療機関等がファクタリング会社へ売掛債権を債権譲渡して早期に資金化可能な資金調達方法です。

診療報酬とは何か、診療報酬ファクタリングのしくみについて、また診療報酬ファクタリングの特長および注意点について解説します。
診療報酬を売上としている資金調達に悩んでいる事業者はぜひ最後までお読みください。

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目次

診療報酬ファクタリングの仕組みについて

診療報酬ファクタリングは診療報酬を売上として計上している事業者が利用可能なファクタリングです。ここでは診療報酬ファクタリングや診療報酬について、またどのような業種が利用できるのかについて説明します。

診療報酬ファクタリングとは?

診療報酬ファクタリングとは、3ヶ月近く遅れて入金される診療報酬をファクタリング会社に売却(または債権譲渡)することで早期に現金化できる資金調達方法です。

診療報酬ファクタリングを利用できるのは、診療報酬を得ている事業者で、具体的には次の3事業者があります。

  •  病院や診療所などの医療関連事業者
  •  調剤薬局など薬関連事業者
  •  介護事業者

ファクタリングとは、売掛金を売却することで資金調達する方法です。売上として計上している事業者が利用可能なファクタリングです。

また、ファクタリングには、次の2種類の手法があります。

  • 2社間ファクタリング(申込人とファクタリング会社)
  • 3社間ファクタリング(申込人と売掛先とファクタリング会社)

診療報酬ファクタリングは3社間ファクタリングを利用するのが一般的です。

診療報酬のしくみについて

診療報酬とは何なのか、また診療報酬の入金にはどのような手続きをするのか、などについて説明します。

診療報酬とは

診療報酬とは、日本医師会によると、医療機関に対し、医療行為(診察、治療、処方など)の対価として支払われる費用のことを指します。

自己負担分(原則3割)として患者から、残りを加入している医療保険者(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)が医療機関に支払うこととなっています。

診療報酬の請求から支払いまでの流れ

社会保険診療報酬支払基金によると、診療報酬から支払いまでの流れは次の通りです。

  1. 受付 
  2. 事務点検・審査事務 
  3. 審査
  4. 計数整理
  5. 保険者別編集等 請求・支払計算
  6. 請求

それぞれについて説明します。

  1. 受付 

保険医療機関が診療した患者のカルテを作成し、1ヶ月分の診療内容を集約した診療報酬明細書(レセプト)を作成します。レセプトは診療翌月の10日までに支払基金に提出することが必要です。

  1. 事務点検・審査事務 

受け取ったレセプトを事務点検し、診療内容に疑問があるレセプトについては、当該疑問事項を入力する等の審査事務を行います。

  1. 審査

事務点検や審査事務を終えたレセプトは、審査委員会において国が定めた保険診療ルールに合致しているか審査します。診療内容が適切でないと査定し、診療行為の適否が判断し難いものなどは医療機関に返戻して再提出を求めます。

  1. 計数整理

審査委員会での審査結果や事務点検などの請求点数に増減があった場合、コンピュータで自動的に計算され、増減点連絡書を作成し医療機関に連絡します。

  1. 保険者別編集等 請求・支払計算

請求点数等の請求・支払データを入力・計算・集計し、医療費を保険者及び医療機関別に計算し、請求関係帳票及び支払関係帳票を作成します。

  1. 請求

帳票を出力し、保険者ごとにこの請求内訳書とレセプトの件数をチェックし、確認を行った後、レセプトに払込請求書及び診療報酬等請求内訳書を添えて、診療翌々月10日までに事務費とともに保険者に請求します。

保険者は、医療費と事務費を同じ月の20日までに支払基金に払い込むことになっています。

  1. 支払

医療機関への医療費の支払は、 診療した月の翌々月の原則21日までに医療機関の指定する銀行口座に振り込む方法によって行います。

つまり、診療報酬は3ヶ月近く後に振り込まれることになっています。
しかし、レセプトに不備などがあると再請求する必要があるので注意しなけれななりません。

みやけん

レセプト提出は慎重にしないと

診療報酬ファクタリングの特長

診療報酬ファクタリングや診療報酬の流れについて説明しましたが、では診療報酬ファクタリングはどのような特長として次の4点があります。

  • 手数料が低くコスパがよい
  • 審査に落ちることがほとんどない
  • 早期資金化が可能
  • 借入でないため決算書に悪影響がない

それぞれについて解説します。

手数料が低くコスパがよい

診療報酬ファクタリングを利用する際、医療機関などの事業者はほとんど3社間ファクタリングを利用します。
なぜなら、手数料が低いからです。

一般的に手数料は、次の手数料率が相場とされています。

  • 2社間ファクタリング  5~20%
  • 3社間ファクタリング  1%~5%

特に3社間ファクタリングについては、ファクタリング会社、申込人および売掛先の3社間でのやりとりになります。売掛先に申込人がファクタリングを使って資金調達をしていることが知られることになります。

売掛先の中には、売掛債権を買い取ってもらうということは、自社に信用がないのかと考えるかもしれません。そのため、長年築いてきた信頼関係にヒビが入る恐れもあります。

診療報酬ファクタリングの場合、売掛先は医療保険者(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)ですので、信頼関係に亀裂が入るといったことはありません。

ですので、診療報酬ファクタリングを利用する医療事業者は手数料が低い3社間ファクタリングを利用するのが一般的です。

みやけん

診療報酬ファクタリングは3社間ファクタリングですね

審査に落ちることがほとんどない

診療報酬は社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会が支払います。
ファクタリング会社は買い取った売掛金が無事回収できるかを審査します。審査対象となるのが社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会といった公的機関であるので、審査に落ちることはほとんどありません。

早期資金化が可能

診療報酬は請求し資金化されるまで3ヶ月ほどかかります。急な出費等で現金が必要な場合、診療報酬が入金するまで待てないケースが発生するかもしれません。また、銀行など金融機関の審査も1ヶ月近く必要です。

診療報酬ファクタリングなら、申し込みから1週間余りで現金化が可能であるため、急な出費にも早期現金化が見込まれます。

みやけん

いざという時役立ちますね

借入でないため決算書に悪影響がない

ファクタリングは売掛金の売買(または債権譲渡)であり、銀行などの金融機関の融資ではありません。
融資を受けると貸借対照表の「負債(借入金)」が増え「資産(現金預金)」が増えます。

一方、ファクタリングの場合、貸借対照表の「資産(売掛金)」が減少し、「資産(現金預金)」が増加するしくみです。
つまり、ファクタリングの利用は、負債が増えないため、企業の安全性の指標のひとつとされている自己資本比率が低下しないメリットがあります。

みやけん

金融機関は安全性をチェックしますんで融資を検討するときにも有利に働きます

診療報酬ファクタリングの注意点

一方、診療報酬ファクタリングに関しての注意点にはどのようなものとして以下の4点があるので紹介します。

  • 診療報酬の100%の買い取りはしてもらえない
  • 利用すると慢性化する
  • 債権譲渡登記が必要となるケースがある
  • 診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ない

診療報酬の100%の買取はしてもらえない

診療報酬の請求から支払いまでの流れで記したように、レセプトの金額は国保連等で修正が発生するケースがあります。ファクタリング会社は修正されることを踏まえて診療報酬の100%の金額での買い取りは行いません。70〜80%が相場といわれています。

ファクタリングの利用を検討している事業者は満額買い取りではないことを認識する必要があるでしょう。

利用すると慢性化する

売上を計上から回収までの期間(売上回転期間といいます)が長いほど現金回収が遅いことを意味します。一般企業は売掛先と交渉すれば売上回転期間は短くなるかもしれません。短くなることで資金繰りに余裕が出てきます。

診療報酬に関しては売掛先が決まっているため、売上回転期間が一定です。

一般企業と異なり、売掛債権期間が売掛先との交渉により短くなることがないため、ファクタリングを利用すると使い続けないと資金が回っていかない可能性もあるため注意が必要です。

みやけん

計画的に利用しないといけませんね

債権譲渡登記が必要となるケースがある

診療報酬ファクタリングの大半が3社間ファクタリングとなるため、売掛債権を譲渡することになります。売掛金を申込人より譲渡されたファクタリング会社の中には高額債権を譲渡された場合、第三者に対抗できるよう債権譲渡登記を行うケースがあります。登記されることにより、第三者にも申込人である事業者がファクタリングを利用していることを知られることとなります。

みやけん

ファクタリング申し込みをするときにはファクタリング会社に債権譲渡登記の有無を確認するのがおすすめです

診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ない

診療報酬ファクタリングは未回収リスクが極めて少ないため手数料が低いという点があります。それは同時にファクタリング会社にとっては儲けが少ないことを意味します。

ファクタリング会社は手数料収入で事業運営しています。できる限り高い手数料で売掛債権を買い取りあるいは債権譲渡を行うことで収益をあげなければなりません。

そのため、回収リスクが皆無であることは承知であっても、収益を第一に考えると手数料の低い診療報酬ファクタリングを取り扱うファクタリング会社は必然的に少なくなります。

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まとめ

診療報酬ファクタリングは、病院や診療所、調剤薬局に介護事業者が保有する診療報酬債権をファクタリング会社へ売却(あるいは債権譲渡)により資金調達するしくみです。
診療報酬ファクタリングの特長として、手数料が低くて審査に落ちることがほぼなく、早期の現金化が見込め決算書への悪影響がないといった点があります。

注意点として、レセプトの全額を調達することは厳しく、ファクタリング利用をすると慢性化するかもしれません。また、債権譲渡登記が必要となるケースがあり、診療報酬ファクタリングを取り扱っている会社が少ないといったことも注意しなければなりません。

診療報酬ファクタリングは公的機関が売掛先であるので、審査に通りやすいことが利点です。
診療報酬の買取(債権譲渡)を低い手数料でファクタリング会社が行ってくれるので、資金調達を検討するときには、診療報酬ファクタリングのメリットを最大限に生かしたいものですね。

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この記事を書いた人

30年余の金融機関勤務経験より役立つ情報を発信しています。
金融ジャンルのSEO記事制作をメインに執筆。
趣味は楽器演奏(ホルン)にマラソン。

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